カトリツカ

ちょいと出先で三時間ほど潰す羽目になった。
三時間ったら中途半端に長い。
ぼけっとその辺徘徊してみるも、
飽きる。
ていうか、
最近ゆっくり寝れてないので眠い。
眠いので、
寝ようと思った。
久しぶりに野宿というか、
ダンボールさんの真似事を。





思えば東京に出てきてからしばらく
なぜか外で寝ることにロマンを覚え、
上野やら目黒やら新宿やら
あちこちでダンボールさんたちに紛れて寝たもんだ。
そんでもって当たり前のように職質受けたもんだ。
いちいち起こされるのがムカつくので
うまいこと人目につかないとこを探したりしてな。
ちなみに先住民の対応が良かったのは上野公園だった。





さて、
適当な公園を見繕い適当なベンチを探す。
いつもながらこの作業が結構楽しい。
しかしながら今回は見つけるベンチことごとくに、
なんていうの?
あの……真ん中に敷居みたいなのつけてある。
ので横になれない。
いっそその辺の地べた平らなとこで
ごろんとなっちまうかとも思うが、
それはどうにもロマンがない。
ので近くにあった滑り台に目をつける。





横になってみると
意外とあの滑るとこの角度が良く、
すぐにリラックスタイム開始。
したはいいものの、
案の定ヤツらが妨害にやってきた。





蚊ッ!





蚊がもーわんさか集まってきて、
この剥き卵のような柔肌のあちこちに針をブッ刺しやがる。
職質の十八倍ウザい。





どうしましょう。
場所を変えたところで
どうせこいつらはまた集まってくる。
ならば闘う他にない。
我が安らかなる眠りのために!
ちゅうことでダッシュで近場のコンビニに駆け込み、
蚊取り線香をゲット。






残ってもウチじゃ焚かないので、
入ってたやつ全部に火をつけ
滑り台の四方を囲む。
ちょっとした祭壇のできあがりだ。
さあ蚊取りというからには
ヤツらの命を取ってくれるのだろうこの煙。
きっと目が覚めたら
俺の周りはヤツらの屍で埋め尽くされているはずだ。
道行く人の視線がチラチラとこそばゆいが慣れたもの。
なんか生贄みたいになりながら
皆様おやすみなさい。





……んで、
目が覚めました。
猫がめっちゃこっち視てたので、
「おはよう」と挨拶してみたら逃げた。
さてちょうど良い時間なので立ち上がる。





身体が蚊取り線香臭い。
それはまあ仕方ないとして……






腕と足がごっつ痒い。
そして……






蚊の屍がひとつもねえ。






……臭くなるだけかよコンチクショウ。


ritsuka